噛んで食べよう

 ほ乳類は、生まれると液体食(母乳)で栄養を取ります。少し成長すると母親から何を食べるか(食性)を学び、固形食へ移行し、自分の歯と顎で噛んで食べられるようになります。その種により何を食べるかは決まっており、草食,肉食,雑食動物に分類されます。人類に近い猿は、草食に近い雑食動物で、自然の食物を前歯で噛み切り、奥歯ですりつぶして食べています。人は猿とは違い、大脳が発達し、手が自由に使えたので、火や道具を用いて食べ物を食べやすいように加工することができるようになりました。その結果、食べ物は小さく刻まれ、料理されることによって柔らかくなり、あまり噛まなくても食べられるようになりました。 農業に適した気侯の日本では江戸時代までは食料を自給し、日本伝統の食生活を営んでいました。伝統的な食生活ではよく噛んで食べるため、顎が発達し、むし歯や歯肉の病気で悩む人は少なく、歯並びもきれいでした。 現代の日本では、人々の生活は豊かになり、あまり噛まずに食べられる調理済みの加工食品や、飲むだけで手軽に栄養の取れる食品があふれています。このような食品ばかり食べていると、顎の骨・関節・筋肉が使われないため、顎は弱々しくなり形も変化します。飲み物がないと食事のできない子供も増えています。食事に飲み物があると、あまり噛まずに食べられるため、つばも出にくく、口の中がきれいになりません"よく噛んで食べると、歯と歯肉は食べ物の繊維で磨かれ、つばで洗われて自然にきれいになります。顎も運動するので、筋肉も骨も丈夫になります。規則正しくよく噛んで食べることは、とても体に良いことなのです。