おしゃぶりの使用(歯科医の立場から)

 おしゃぶりの使用については育児雑誌や母親同士のうわさ話などで、賛否両論の情報が飛び交っているため、悩んだり、迷ったりしている人も多いと思います。小児科医と歯科医、あるいは医師の間でも見解が異なる場合が少なくありません。
 おしゃぶり賛成派の情報では、おしゃぶりの効用が説かれています。それによるとおしゃぶりはあごの発達を促し、口を左右対称に使う習慣ができるので、むしろ歯並びを良くし、さらに口呼吸を防ぎ、鼻呼吸を身に付けさせるのに効果があるといった内容です。しかし歯科医の立場からしますと、この効用については少し疑問があります。確かにおしゃぶりがあれば、子どもがすぐに泣きやんでくれることも多く、大変便利なものでおしゃぶり賛成派の説を信じて使用したいところです。しかし育児雑誌の情報にはおしゃぶり販売会社のスポンサーが付いていたり、情報は必ずしも中立ではなく、偏った情報が流れていることも考えられます。
 フィンランドの研究では、おしゃぶりの使用回数を減らすことにより、6ヶ月〜1歳半の子どもの中耳炎の発生頻度が29パーセントも減少したという報告もあります。歯並びについては、おしゃぶりをあまり長時間使用していると、開咬といって前の歯が閉じにくくなる歯列不正を起こしてしまうことがあります。また少しずつ言葉を覚えていく時期に長時間おしゃぶりを与えることにより言語の発達を妨げてしまう可能性もあるようです。
 おしゃぶりは口の機能を身に付けるための必需品ではありません。おしゃぶり賛成派の理論だけを信じて、積極的におしゃぶりを与えるものではないことだけは知っておきましょう。