誤嚥性肺炎について

誤嚥性肺炎とは、唾液や食事、胃液などと一緒に細菌を誤って肺へ吸い込んでしまうことによって起こる肺の病気です。通常では、仮に誤って肺へ吸い込んでしまっても(誤嚥)、激しくせき込んだりして肺から異物を出そうとする反射が起こり、肺炎にはなりません。しかし高齢者や脳に病気がある方は、飲み込む機能(嚥下機能)や咳をする力が弱く、この反射が十分に起こらないことがあり、本人も周りの人も気付かない間に誤嚥を起こし肺炎となります。
原因菌は、鼻や口の中にいる雑菌が大部分です。ただし菌が肺に入ったからといって、すべての人が肺炎になる訳ではなく、脱水や栄養状態が悪かったりなど、さまざまな要因が複合して起こります。
症状は発熱、せき、たん、呼吸困難などですが、初期には目立たないことが多く、また高齢者では発熱やせき、たんが見られないこともあり、なんとなく元気がない、普段と様子が違うなどが発見の契機となることもあります。

治療としては、細菌が原因であるため抗生物質が有効で、通常の誤嚥性肺炎は治癒することが望めます。しかし、高齢者など誤嚥の危険性が高い方は肺炎を繰り返す場合が多く、また再発を繰り返すと抗生物質が効きづらい“耐性菌”が発生し、治療が困難になります。このため、優れた抗生物質が開発された現在でも、多くの高齢者が死亡する原因の一つになっているのです。

誤嚥そのものは完治することが難しいですが、口腔ケアによって細菌や食べかすを減らし、口腔内を清潔に保つことが安全かつ効果的な予防法です。